第19章 手のひら合わせて。
結局あれから綾菜が教室に戻ってくることはなくて。
俺は心配になって校内を探し回る。
15分くらいたった今でも綾菜を見つけることは出来てない。
俺は少し呼吸を整えようと立ち止まると、視界の端に見つけた小さな人影。
あれはきっと綾菜だ。
屋上へ向かう途中の階段。
俺はそこを目指して歩く。
「…研磨…。」
「なんかあったの?」
俺の目を見た綾菜はもう壊れる寸前だった。
目を真っ赤にさせて、頬を紅潮させて。
「私、クロのこと…信用、できなくなっちゃった…」
ポツリ、独り言のように呟いた言葉に、俺はどう返すのが正解なのか分からなかった。
「どうして?」
俺はこの一言を言うと、綾菜の瞳だけを見つめる。