第19章 手のひら合わせて。
「…なんか……」
小さくそう呟く声はものすごく震えている。
俺は話を急かすようにはせず、自分のペースで話せるようにただ隣に座っているだけ。
なんだけど、いくらなんでもこれじゃ話が終わる気がしない。
…そんなに、やばいことが起きたの?
「大丈夫だよ、俺は誰にも…クロにだって言わないよ」
俺がそう言うと綾菜は深く深呼吸をして言葉を発する。
「…あのね…私聞いちゃったの…。
クロはヤれたら捨てるって、付き合う目的なんて性欲を発散するためだけって…、私こんなんで、クロを信用出来なくなって…信じてるはずなのに…でも信じられなくて……」
「誰に言われたの?そんなひどいこと」
でも、綾菜は基本、人をすぐに信用しなくなる人じゃない。
だけどこのことばかりはね…
むかし、色々あったっぽいし。