恋に落ちる瞬間は(仮)[ONE PIECE/サンジ]
第3章 過去と今
淡々と語られ、露わになっていく彼女の過去。
一人の海賊に拾われ、その人を愛し愛され周りからも愛されていた彼女と自分が少し重なる。でも一つ違うのは、心通わせた相手がいたという事。ナミさんやロビンちゃんより幼いといっても、彼女も立派な一人の美しいレディだ。言い寄る者もきっと少なくはないだろう。もっと早くに出会っていればともやもやとした黒い霧が俺の心に纏わり付き、少しずつ蝕んでいく。
多分、これは嫉妬だ。
初めて嫉妬というものを経験したが、なんとも胸糞悪ィ。吐き気さえ覚える。
彼女が全て話し終えると俺は黙って席を立ち、換気扇の下で煙草に火をつけた。一刻も早くこの黒い霧を煙に乗せて身体から追い出したかった俺は、普段より長く煙を吸い込み肺の中いっぱいに充満させる。そしてふぅ…と3秒ほどかけて全て吐き出すが未だ心は晴れない。
一人は辛いと言う彼女の心の中にはまだ恋人だったという奴が住んでいるのだろうか。
まだ彼女はそいつを好きなのだろうか。
こんな事を思うのは最低だとわかっちゃいるが、もういない奴のことなんか忘れてくれ。
俺がいる。
ナミさんの腕の中で子どものように声を上げて泣く彼女に、そう心の中で問いかける。
ガタンと床に倒れた椅子の音を聞き俺は意識をそちらへと向けると、なんとルフィが彼女を仲間へと引き入れたのだ。急なことではあるが俺としては願ってもねェ。これでもっと彼女と一緒にいられる。短くなった煙草の火を灰皿へ押し付けてもみ消すと、俺は彼女の元へと歩みを進めた。
もう君を一人にはさせないから。
どうか俺を見て。