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第18章 近付いた背中(後編)[金城真護]


唐突に感じた暖かな温もり。それは紛れもなく金城先輩のもので。
(わ、私、金城先輩に抱きしめられてる…!?)
「雪音」
「…っ」
「自分なんかなんて言わないでくれ。俺自身、最初は興味本位程度だったんだ」
そして金城先輩が話してくれたのは、私への気持ちの変化だった。
「篠宮に追われていた所を助けて、成り行きとはいえ自転車部の見学に誘って、家まで送ったら案外近くで。それから何だかんだと自転車部に来てくれることが多くなって、一緒に帰るのが日常になって…そうしているうちに、いつの間にか俺は君に惹かれていたんだ。どこに惹かれたのか、と言われてもすぐには出てこないが、恐らくは不器用ながらも一生懸命に頑張る姿に惹かれたんだろうな」
本当に金城先輩はズルい。時間をかけて固めた私の決意を…こんなにも容易くガタガタと崩れさせていくんだ。
「だから、俺は君がいい。俺が選んだのは君だ雪音」
「…ほん、とうに…私で、いいんですか?」
「嗚呼。雪音じゃないとダメなんだ」
俺からの告白、受け入れてくれるだろうか?なんて優しい声音で問われたら、そんなの答えは一つしかない。
「――はい!喜んで!!」





インターハイを終えた後、3年の先輩方は引退。今度は私達2年が後輩を引っ張っていくことになる。
引退後は金城先輩は部活が終わるまでの時間、図書室で受験に向けた勉強をしているそうだ。
今度は立場が逆になりましたね、なんて他愛ない話をしながら帰る帰り道。でも今は一つだけ大きく変わったことがある。
それは、貴方の背中が遠くじゃなく隣というすぐ近くになったこと。
(貴女に出逢えたことは、私にとって最高の宝物です)
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