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第18章 近付いた背中(後編)[金城真護]


金城先輩と初めてマトモに話して一緒に帰ったあの日から1ヶ月。私はなんだかんだ自転車部に行くことが多くなり、自転車部の部員達も私を受け入れてくれた。
「インターハイ、ですか?」
今日も自転車部の見学に行き、その帰り道で金城先輩から話されたのは近く行われる大会についてだった。
「嗚呼。8月の頭、1日〜3日の3日間かけて行われる大会だ。雪音にもぜひ来て欲しい」
「でも私は自転車部の部員じゃないのに…いいんですか?」
「その引け目があるなら、マネージャーとして来てくれればいい」
「マネージャー…」
私に務まるだろうか。これまでだって度々手伝ってはいたものの、ちょっとした事だけだった。
「寒咲もいる。雪音ひとりじゃない」
「…分かりました。後日入部届け持ってきます」
「助かるよ。俺たち3年は今年が最後だ。可能な限り万全の状態で臨みたいからな」
そう言う金城先輩の横顔は決意に満ちていて。この最後のインターハイにかける覚悟が伝わってくるようだった。
「私もできる限りサポートしますね!絶対優勝しましょう!!」
そう意気込む私をみて優しく微笑み、不器用に頭を撫でてくれた。
「あ、あの…?」
「っすまない、つい…」
「い、いえ…」
頭を撫でられただけでドキドキと胸が高鳴る。
ちらりと横目に金城先輩を盗み見ると、正面を向いていて表情は分からないけれど耳のあたりが少し赤くなっていた。
(少しは意識してくれてるって…自惚れてもいいかな…?)
「それじゃあ雪音、また明日」
「あ、はい!また明日…」
遠ざかっていく背中。その背中を見つめながら、ふと思った。
(最後のインターハイ、か…)
私はあと何度、こうして金城先輩と"また明日"が交わせるのだろうか。
(きっと、金城先輩が引退したら話す機会も無くなっちゃうんだろうな)
卒業してしまったら尚更。そうして離れ離れになってしまうんだ。
(私も腹くくらなきゃ。インターハイが終わったら告白しよう)
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