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第16章 気付きしも届かぬは焦がれし想ひ[我妻善逸]


「…雪音さんは本当に玄弥が好きなんですね」
「な、何かしら急に」
ほんのりと頬を赤く染める姿はまさに恋する乙女。こんなにも可愛らしい女性(ひと)に想われてる玄弥が羨ましい。
「玄弥の話をしている時、穏やかな音がずっと聞こえるんです。雪音さんのは本当に純粋な想いだから聞いてて心地いいと言うか…」
「そ、そう?」
「はい。…玄弥、振り向いてくれるといいですね」
「ええ」
雪音さんの恋路に俺が干渉することはできない。否、してはいけない。
俺の雪音さんへ対する想いは断ち切るべきものだ。ただ溢れないようにフタをする。
近い未来、2人が幸せそうに肩を並べて笑い合う姿に「おめでとう」と言えるように気持ちの整理をしておこう。
今まで「コイツには無理だ」と周囲から期待されることのなかった俺。諦めずになんども向き合ってくれたのはじいちゃんだけだった。
鬼殺隊士となって雪音さんに出会って。彼女もまた、こんな俺を受け入れてくれたんだ。
だからこそ、彼女を困らせるようなことはしたくない。
(大丈夫、俺には禰豆子ちゃんがいる)
思い浮かべるは鬼となってしまった炭治郎の妹 禰豆子。善逸は禰豆子に一目惚れし、夜になると毎夜のように禰豆子へと語り掛けているのだ。
(ただ…今はまだ、貴女を好きでいさせてください)
せめて、この叶わぬ想いにしっかりと蓋をできるまでは――。
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