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第14章 秋めく景色に馳せるは愛しき面影[煉獄杏寿郎]


それもこれも、全ては師範のおかげだ。
師範に恋焦がれるようになってからというもの、少しずつではあったが赤色を好きになることが出来た。
炎柱という名に相応しい、燃えるような炎の如く確固たる信念を持ち、暖かな炎のように優しさを持ち合わせた人。
赤色はこの人を象徴するかのような色だ。
想い人の色を嫌いでいられるはずがない。
「何かきっかけでもあったのか?」
その問いかけに私は想いをこのまま伝えてしまおうかとも思ったが、それはあえてせずにただ一言「秘密です!」と悪戯な笑みを浮かべた。
刹那、柔らかな風が一陣吹き抜けてゆく。
風に散る枯葉と相まって儚くも美しく映ったその笑みに、一瞬見惚れた煉獄。彼もまた継子である彼女に惚れてはいるものの、師範だからと想いを隠し続けていたのだ。
「そうだ師範!このまま休憩がてら甘味処にでもいきませんか?」
「…そうだな。今回は俺の奢りだ!」
「本当ですか!?わーい!!」
「そうと決まれば善は急げだ!」
「!――はい!」
すれ違いざまにすくい取られた手がじわりと熱を帯びる。
師範らしい暖かくて大きな手。それはいつも私に変わらぬ安心感を与えてくれる大好きな手だ。

(貴方と過ごすこれからの日々が、どうか幸多く在らんことを…)

手を繋いで連れ立って行く2人の表情には、照れをはらみながらも幸福な色が浮かんでいた。
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