• テキストサイズ

短・中編集

第14章 秋めく景色に馳せるは愛しき面影[煉獄杏寿郎]


季節は夏から秋へと移り変わり、炎柱邸の周囲に茂る木々たちも次々に葉を色づかせる。
「師範見てください!木々の葉が綺麗に色付いてますよ!」
「うむ!今年も美しく色付いたな!」
毎日の厳しい鍛錬の中、束の間の休憩で炎柱邸の周辺を散歩しないかとお誘いを受け二つ返事ではい、と答えた。
想い人からのお誘いなのだ。断るはずがない。
気付けば、私が炎柱 煉獄杏寿郎さんを想い慕うようになってからもう1年と半年が過ぎようとしていた。
事のきっかけは、私の家族が鬼に惨殺された日の事だった。
ある日の真夜中、微かな物音に気付いた私は微睡む頭で音の原因を確認しに行った。そこには、大きな図体を持った鬼に貪り喰われる家族たちの姿。
助けに来てくれた師範に拾われ、私は炎柱の継子として剣士となるための修行を開始した。
最初のうちは、家族が殺された場を目撃した精神的負荷で無気力状態が続いていた。が、師範がずっとそばにいてくれたお陰で、私はこうして前に進むことが出来ていられるのだ。
「そういえば雪音よ」
「はい、なんでしょうか?」
「君は確か、赤色が苦手ではなかったか?紅葉には赤も目立つ。…恐ろしくはないのか?」
「そう、ですね…。まだ完全に克服したわけではありません。でも、もうそれほど怖くはないんです」
師範に背を向け、私は彼の数歩先を歩く。
拾われて間もない頃。私はあの夜がトラウマとなってしまい、赤色に対して恐怖心を抱いていた。
空を見上げ、美しい紅葉を視界に映す。当時はこの紅葉の赤でさえ恐怖を覚えていたのだ。
それが今はどうだろう。こんなにも美しいと思える。あんなにも畏怖していた赤を、受け入れられている。
/ 91ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp