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第7章 想いは泡沫のように[シーヴァ・キング]


こんなことをしても彼の"1番"になれる訳でもないのにもしかしたら、なんて淡い期待を抱いて。
あの人には恋人がいる。それもとても美人な人。そんな人がいるのなら、そりゃ最初から私なんかに勝ち目なんてないわな。
(踏んだり蹴ったりだなぁ…ホント…)
そして少しくらい味見しようとかなんとか聞こえ私のブラウスが胸のあたりから引き裂かれた時。
バンッと重い扉が勢いよく開かれた。そちらの方をみて目を見開く。
(そん、な…)
彼が来るはずない。シノブさんやラジュさんならまだわかるが、彼自身が単独で乗り込んでくるなんてありえない。
「待たせたね雪音」
嗚呼、でもこの愛しい声は紛れもなく彼のものだ。
「シーヴァ…っ!」
私の姿を見、彼はその整った顔の眉間に皺を寄せた。
「雪音に何してるの?」
明らかに怒気を孕んだ声が響く。しかし私には解らない。なぜ彼がそこまで怒っているのか。
「ちょうどいいや。そこのお兄さん達、是非とも僕の被検体になってよ」
そしてあっという間に犯人達をのして私に着ていた白衣をかけてくれた。
「あの…」
どうしよう何をいえばいいんだ。とりあえずごめんなさい?
「何された?」
「ぁ…えと、シャツを引き裂かれただけ」
「そう」
それだけのやり取りでシーヴァは私を横抱きにして監禁されていた場所を後にした。
その後、シノブさん達と合流して無事にラボへと帰ってきた。
「雪音、ちゃんと気をつけてよね。君は僕の大切な"助手"なんだから」
いつもは"被検体"って言うのに、こういう時だけはちゃんと"助手"と言ってくるのだからこの人は狡いと思う。それでも。
「はい!」
いつかは泡沫のように消えるであろうこの想いは、まだ大切にしていたいと思う。
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