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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第3章 衝動| カカシ


 カカシ先輩は、私が暗部にいることは知らないだろうが、染み付いた死臭には気付いているかも知れない。その証拠に、あの夜以来、カカシ先輩は私と目を合わせようとしなくなった。前なら、緊張したように目をそらす私をからかうように、わざと目を追ったものだった。今はそれがない。さりげないつもりなのか、わざとなのかは分からない。けれど、あの人が私を警戒しているというのは事実だった。
 あの人は私を避けたが、詮索は続いていた。堂々としなくはなったが、こそこそとは続けているらしい。火影様が言うのだからそうなのだろう。注意しろとも言われた。私自身は見てはいないが、確かにそんな気はしていた。もともと詮索されること自体好きではないが、隠れてされることは余計私を苛立たせた。
 そう、私は苛立っている。怒りをぶつけようにも、見られている可能性があったから出来なかった。かといって、任務で発散してしまえば、良くない評判がたつのは明らかだったし、さらに自分が壊れていくような気がしてやはり出来なかった。ストレスが溜まってしょうがなかった。だめだ、またイライラする。こんなこと初めてだ。
 あの時は、中途半端な任務で気持ちが晴れなかった。それにあの人だって好戦的だった。もし戦っていたら、いくら明かりがなくとも顔を見られただけじゃすまなかっただろう。私は偽り続けなければならないのに。逃げるために、本気を出すのは当然だった。ただ、仮にもあの人だって闇に身を置いていた人間だ。はっきり私だというと確信はなくとも、あの人にとって近しい人間だとは思わせてしまったかもしれない。
 私とあの人との間には確実に壁が築かれていった。そしてその壁が徐々に高く、厚く積み上げられていくのにも気付いていた。
 けれど、私は悲しむばかりか、むしろ歓迎した。これで殺してしまわずにすむ、と。構わない。私を知る人が誰一人いなくなってしまっても。構わない。私の心が蝕まれていっても。その方が任務に支障がない、好都合だ。
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