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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第3章 衝動| カカシ


危ないところだった。
もう一度、深く呼吸をした。職業病だとか、そんな優しいものではない。危うく臨戦体勢に入りかけていた自分を呪った。彼が行ってから私の中で増えていた黒い塊は煙の様に消えていったが、そんなこと一時的にすぎない。それどころか今度は、もっとレベルの低い相手の殺気にも反応してしまうかもしれない。いくら情報より手間取らずに終わったといって、そんなに血に飢えていたのかと思うと嫌になる。あの時、まだ距離はあったが、まがまがしいとさえ思える気配は確実に私に向かっていた。私はそれを受けてどう思った?恐ろしいと、怖いと、死んでしまうかもしれないと、確かに思ったけれど……心の奥底では何と思っていた?
優しく包み込んでいた大気は、冷たく私を突き放す。
きっと、クナイを抜いていたら、私は死ぬまで戦い続けた。それだけカカシ先輩の殺気は私の理性を破壊するには十分だったのだ。実際は、私はクナイを抜かなかったし、立ち向かう代わりに彼から隠れた。人としてあるべき物は、まだ破片として残っているらしい。それでも、私は……壊れている。

なぜ、あの人は私に気付いたのだろう。あの人も任務の後で昂っていたのだろうか。そのために感度が普段より良くなっていることは十分考えられる。それに、だいぶ抑えてはいても、あのスピードで走れば、私を不信に思うのも当然か。
 このまま走り続けても、きっと私は落ち着きはしない。疲れようにも、自分は子供の頃よりずっと体力がついてしまっていた。それにあの人のおかげで神経を逆撫でされていた。さすがにチャクラを使いきって眠る、なんて恐ろしいこと私にはできないので、結局薬に頼るしかないのかもしれない。
黒い雲はゆっくりと、星空を覆い隠していった。
 不意に笑みがこぼれる。鏡が無くとも分かる。自嘲的な笑いだった。
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