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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第3章 衝動| カカシ


音もなく闇夜を疾走する。任務の後、報告は済ませていても、そのまま外をうろつくのは本当は好ましくないのだが、そうせずにはいられなかった。
少しずつ平常を取り戻していく。夜風がほてった体に心地良かった。昔は、夜の眠りについた里をよく走ったものだった。朝方まで走り通せば、疲れてよく寝れる。そうやった日は薬よりずっと目覚めがすっきりした。
他の里からの抜け忍の始末。厄介な仕事だった。命を落とすかもしれないが、里のためとせっかく決意して臨んだというのに、思いの外、呆気なく終わってしまった。拍子抜けだった。どうもしっくりこない。体の中の熱が溜まったまま落ち着かない。とにかく疼く体を鎮めてしまいたかった。
屋根から屋根へとぽーんと大きく跳躍した。音は立てない。影もない。私の様な忍がこんな真夜中に走っていたら、普通なら見回りの忍のおとがめに遭うだろうが、その辺は大丈夫だ。見つけられない程度に気配は消している。それに、今夜は新月だった。

民家のない、里の外れまで来た時だった。突然、ぞくり、と強烈な殺気を感じた。
キケン。
思わず本気を出して逃げ身を隠す。どくんどくんと大きく心臓が波打った。溢れようとする殺気を懸命に抑えて私をあおる気配を捜した。
これはカカシ先輩?どうしよう。よりによってこんな時にカカシ先輩だなんて。
どくん。
一瞬、思い浮かんだ恐ろしい考えにに肌が泡立った。
まずい。
背中がじっとりと濡れる。体が熱くなるのに反比例して頭は冷えていった。目の前がすうっと鮮明になる。
まずいまずいまずい。
早く、早く消えてくれ!
カカシ先輩へ辺りを伺ってはいるが、木に隠れる私を見つけだすまでは至らなかったらしい。ふっと、遠くへ消え、それきり現れなかった。

…よかった。
汗が頬を伝う。その場にずるずると座りこんだ。大きく深呼吸をする。クナイにそえられていた手をゆっくりと顔の高さまでもってきた。手は心なしか震えていた。
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