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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第7章 言の葉| カカシ


「じゃ、明日もよろしく。」
明日もよろしく。またあした。呪いの言葉だ。いなくならないようにと、私をここへと縛り付けるための。
自身の意思とは関係なく、退院後のカカシ先輩の護衛は続いていた。退院後は箸を持っての食事にも疲れが見える状態で、とても一人で生活を送れる状態ではなかったから家事など含め彼の身の回りの世話をしながら、リハビリを行っていた。ただ最近は体の具合も安定してほとんど私の助けもいらなかった。
また明日なんて言われなければとっとと消えてしまうのに。一方的に告げられる言葉さえ無下にできない自分がいた。今や暗部としての仕事、それこそ他の里への潜伏や、暗殺は最近はほぼ皆無だ。その代わり日中のカカシ先輩の護衛の後、綱手様の助手、医療忍者としての任務が中心となっていたが、毎日あるわけではない。この人から離れられなかったというのもあるが、殺伐とした世界から離れ、日の当たる世界でのうのうと生きている身では、誰にも知られず消えていったあの人達に合わせる顔がない。だから、あの森にはどうしても行く気になれず、久しくあの石碑は見ていなかった。
何か、任務遂行に不備でもあったのだろうか。私が暗部には向いていないと、綱手様は思っていらっしゃるのか。何度となく進言しているがあの人の護衛は、もう不要だ。私はこんな平和な日々は必要としていないのに。私は戦い、誰にも知られず散っていくべきだ。ここを出たらそう綱手様に申し出よう。
じゃあまた明日、だって? 明日はきっとここに戻らない。
何も返事はせずカカシ先輩の家を出ようと扉に手をかける。カカシ先輩が見送ろうと、のろのろと近づいてきた。
少し扉を開けたところで、後ろから伸びてきた手がドアノブに添えた私の手をつつみこみ、ゆっくりと扉を閉めた。彼の腕がくびに伸び、背中に重さと温かさが伝わる。
「山上ナチ」
耳元で響く彼の言葉は、熱を帯びていた。声は私の体をめぐり、神経毒のようにじわじわと体の自由を奪う。彼が息を吸い続きの言葉を出そうとするのを、ただ何もできず祈るような気持ちで待つしかなかった。
「行くな。」
彼は少し背の低い私を包み込むように抱き寄せた。
呪縛という言葉がぴったりだ。恐れていた言葉により、声も出せず立ち尽くす。もう私は、どうすることもできない。一筋の涙が、頬を伝った。
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