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涙はとうに枯れてしまった【NARUTO】

第8章 休息の後| カカシ


男の長い指が女の唇にそっと触れると、女はにこりともしないで男の方を見る。吐息がかかるほどの距離に顔を寄せ合い、お互いの視線はしっかりと絡んでいた。

男は女の頰から顎にかけての緩やかな曲線を手指の背側でなぞり、一通り味わうと、指先でぷっくりとした唇の輪郭を撫でた。


女の視界をゆるく塞ぐと、空いた手で自ら口の当て布をずらし、触れるだけの口付けをした。女の視界を奪っていた手を首筋、鎖骨に這わせる。ほんの少し唇を放すと目の前の女のまつ毛がゆっくりと上下した。

男はもう一度唇を寄せようとしたが、今度は女の手が男の唇を塞ぐ。

男は邪魔な手をとり、愛おしむようにその手に何度も口付けを落とした。
「何?」
ようやく男が口を開いた。
「それはこちらの台詞ですよ。」
男の声に答えて女の口から出された言葉は、それまでの甘い空気とそぐわない、殺伐としたものだった。

男は優しく扱っていた手を女の頭の上にしっかりと押さえつける。

「無理やりの方が好きなの?」
男は耳元に口を寄せささやいた。

「倒れ込んだのはわざとですか?」
「うーん。つまずいたのは、わざとではないけど。まぁ、支えようとしてくれてるし、倒れた先にはソファもあったから、ありがたく好意に甘えようかな、と。」

女の低い声に臆さず、男は飄々とした声を出した。

「本気だして暴れられると、俺また怪我して入院しちゃうよ。良いのそれで?」

男は首筋に頭を埋め、キスを落としていく。
女は返事をせず唸り声を上げるだけだった。
「いいじゃない。もう付き合ってるも同然でしょ。俺は裸を見られてるし。病室は嫌かと思って我慢していたんだから。」

男は体を少し起こし、自分の下に組み敷いた女の顔を覗き込む。
女は心底嫌そうといった顔で睨んではいるが、跳ね除けるような動作は少なくとも見受けられなかった。男は額を女の額にあわせ、お互いの鼻先を触れさせる。
「じゃあさ、付き合ってよ。」
背中に手が伸びそのままゆるゆると脇腹、腰、太ももへと下がる。

「ねぇ、付き合うでしょ。」
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