第1章 04月25日
(…ねえ、千尋?僕達どうすればもっと一緒にいられたかな)
身に覚えのないセリフをわたしはここ最近いつも聞かされている。
(…何が僕達を引き裂いたんだろうね、)
そんなこと、わたしは知らない。わたしはいつも彼の言葉を無視してきたがそろそろ限界も近い。初めて彼に対して声を荒らげた。
「これはわたしの夢の中だけどあなたの記憶での出来事でしょ?わたしの記憶に起きたことじゃないはず。だって、わたしはあなたを知らないもの!」
(…僕はもっともっと君と一緒にいたかったのに!!ただ、それだけなんだ!!)
そういって、誰かもわからない彼はグイッと近づきわたしの首を絞めた。同じくらいの年頃とは言え、男の子だ。絞め付けられて息が苦しい、本当に死ぬかもしれない、
「……まだ死にたくない」
そう思ったときに夢は醒めるのだ。
このとおり、今日も目覚めの悪い夢を見た。なぜか最近は同じ夢ばかりを見続けている。眠っている時間に対して、夢の中で誰かがわたしのことを呼び続ける時間はほんの一瞬だ。気味が悪い。
それでも、毎日見ているのにわたしのことを呼び続ける人は誰だかわからないし、そもそもこんな夢を見続けている自分を気持ち悪いと思う。
いつも「もっと君と一緒にいたかった」と言いながら、彼はわたしの首を絞める。時には優しく、時には悲しそうに、時には無表情で。
そして、今日は憎しみを込めながら告げられ、思いっきり首を絞められた。一緒にいたかったと告げられたところで、いつも夢は醒めてしまう。
しかし、今日はいつになく恐怖があった。彼の殺気は今までの中で一番だったと思う。未だに首の辺りに違和感がある。あそこまで感情を昂ぶらせた彼を見るのは初めてだった。
きっとわたしの言葉が、誰かの“記憶”の中の彼を怒らせてしまったのだろう。
…わたしは彼のことを知らない。
そうだ。これはきっと、知っているようで知らない誰かの“記憶”。わたしの“記憶”であるはずがないのだ。