第11章 良月
和奏が無言で水道の水を止めて、ソファーへと移動する。
好きになれって言わないと約束したのに…
たった2ヶ月で痺れを切らした俺に呆れたんだろうか。
1人キッチンに残っても仕方がないので、和奏の後に続く。
「あの…影山くん…」
なんて続くだろう?
やっぱり無理。とか、
どうしても好きになれない。とか、
こういう時、ポジティブな考えはなかなか浮かばない。
下手な事は喋らない方がいい気がして黙り込む。
「ごめんなさい。私、勝手に影山くんにも私の気持ち伝わってるものだと思ってて…だって、それくらい当たり前のように側に居てくれたから。」
話が見えなくて、黙り続ける俺を相手に、和奏が続ける。
「私、影山くんの事、好きだよ。いつから…とか、そう言うのはわからないけど、本当に好き。伝えるのが遅くなって…ごめんなさい。」
最初に謝られた時は心臓が止まりそうだったけど…
こんなに嬉しい謝罪は聞いたことがない。
思わず和奏を抱きしめる。
「なぁ、キスしていいか?」
「いつも思ってたけど…聞かなくてもキスしていいよ?」
なんて破壊力のある言葉だろう。
早速とばかりに和奏の唇を奪う。
嬉し過ぎて、勢いで舌を進めれば、和奏がしっかりと絡め返してくる。
やばい…幸せ過ぎて、いつまでもこうしていられそうだ。
けど、実際にいつまでもキスを続ける訳にはいかない。
「ん…。」
キスの合間に呼吸する和奏の吐息を聞いていると、俺の理性が決壊寸前だ。
ガバッとキスをやめ、驚いた様子の和奏を横抱きにしてベッドに連れて行く。
ゆっくり下ろして、和奏を跨ぐような形で見下ろす。
「キス以上の事も…聞かなくてもいいか?」