第7章 始まり
あの一件があって以来、私の周りは急激に変化していた。
急に上履きが無くなったり、掃除の時間に突然上からゴミが振って来たり。
その他諸々のこともあったが、しばらくすれば収まるものだとばかり思っていた。
『バシャっ』
流石に肌寒い季節に大量の水を頭から被せられるとは思ってもいなかった。
「クスクスっ♪」
複数人の女子生徒がパタパタと走って行く音が遠ざかって行くのと共に、髪から滴り落ちる雫のピチョピチョという音が大きくなっていくような気がした。
あいにく今日は体育の授業が無い為、職員室に行って借りてこようと足を運んだ。
「はぁ…」
中学生時代にも同じような事はあった。
私が他と変わっているから、まさに標的になるのだろう。
「こんな姿、小林くんには見られたくはないですね…」
自分の汚点は見られたくないもの。
それが好きな人になら尚更見られる事を避けたいと思うもの。
私は先生に『水道の蛇口をひねり過ぎて濡れてしまった』と説明し、共同用の体操服を借りて着替えをした。
教室に戻りたくないと思うのはもしかしたら初めてかもしれない。
『ガラッ』
「あ、神崎さん!…どうしたの?」
優しい小林くんは当然この格好について聞いて来るとは予想していた。
「蛇口をひねり過ぎて制服が濡れてしまったので、職員室にて着替えをお借りして来ました。」
「そ、そうなんだ。」
(ちらっ)
「クスクスっ」
「神崎さんって時々抜けてるところあるからねー、気をつけないと。」
「抜けてるとは、どういう意味でしょうか?」
「んー?まあ可愛いってことだよ♪」
「?」