第17章 コンクリートを漂流
「…ま、まぁ、デクくん優しいしさ!きっとすぐ仲直りできるさ!」
お茶子ちゃんがグーを出して元気づけてくれる。
にいっと笑って。
「うん…うん…ごめんね…!」
心配かけないように必死に涙を拭う。
仲直りって…どうやってすればいいんだろう…。
私が頑張って涙を拭っていると、奥から先生が声を上げた。
「安藤、あんたの意見も緑谷の意見も、どちらも間違っているとは言えない。」
先生は真面目な顔で、ゆっくりゆっくり話す。
私が保健室に行った時はいっつも優しいから、あまりこんな真面目な顔、見たことなかった。
「…はい。」
「あんたはさっきの試験、後悔してるかい?」
「……いいえ。」
後悔なんてしない。しちゃ、ダメだ。後悔なんかしたら、もっともっと失礼だ。きっと、後悔したことを後悔する。
「でも、失礼だったかなって……ちょっと…申し訳なくて……意地を張っちゃったのも……。」
言葉が尻窄みになって、ゆっくり下を向く。
しかし先生は、優しい声で、
「ならその気持ちを緑谷に伝えてやんな。ちゃんと仲直り出来るから。」
顔を上げて先生の方を向くと、先生はモニターに顔を向けたままだった。
あぁ、先生が言うならきっと大丈夫なんだろうな。
先生の言葉で、私の心はいとも簡単に暖かみを取り戻して行った。
ほっぺたをパチンパチンとたたき、みんなに顔を向ける。
「ご心配かけて…誠に…申し訳ありませんでした。」
頭を垂れて謝罪をする。
「大丈夫ですわ。」
「やれやれ、安藤くんのまわりはいつも大騒ぎだな。」
「ひよこちゃん元気になってよかったー!」
「ケロケロ!緑谷ちゃんの試験が終ったらちゃんと謝りに行けばいいわ。」
「ありがとう…」
「ほら、もう試験が始まりますわ!」
「そうだよね…出久くん、まだだもんね…。」
さっきの事で、焦っちゃってないかな。
もっともっと気の利いたことを言ってあげたかった…。
すこし心配をしてモニターを見る。
ケンカのせいで出久くん落ちちゃったらどうしよう。私のせいだ……。
…ううん、きっと大丈夫…。出久くん強いもん。強くてかっこいいもん。
心の不安を全部頑張れの気持ちに代えて、全力で応援しようと心に決めた。
《緑谷、爆豪チーム。演習試験。レディ、ゴー!》