第1章 過去の前の日
私を助けてくれたのは、無個性で、ちっぽけで、弱いヒーローだった。
「がんたいおんな!おまえ無個性だろ?」
「よわー!!さいあくじゃん!」
「眼帯外してみろよー!!」
「……。」
「…。なんか言い返せよ!むかつくんだけど!!」
「いたっ」
男の子に突き飛ばされて転ばされて、痛くて、辛くて、寂しくて。泣いてしまったとき。
「ひっく、ぐすっ。」
「んだよ。ないてんの?」
「ダッセェ!うっぜぇ!」
「泣き虫〜!」
「ひ……ひどいよかっちゃん。ないてるだろ!これ以上は、僕がゆるさないぞ!!」
私の前に立って、男の子達に立ち向かってくれたのは、彼だった。
「……ひー、ろー……?」
彼の後ろ姿はお世辞にも頼りになるとは言えないものだった。震えていて、へっぴり腰で。
でも、彼のその姿は、その後ろ姿は、その時何よりもおっきく見えて。
その背中は、
私に居場所を与えてくれた。
結局彼はボコボコにされてしまったけど、その時確かに彼は私のヒーローだった。