第9章 英雄の後ろ姿
「それと、私は君にお礼を言いに来たんだワン。」
「へ?」
予想もしていなかった言葉に、私はアホみたいな声が出た。
「安藤さん、よく頑張ったワン。個性も使わず。」
「い、いえそんな」
「君が行ってくれなかったら飯田くんは危なかったワン。君はヒーロー殺しに声をかけた、なんて聞いたワン。大の大人でもなかなか出来ることじゃないワン。私は君を賞賛するワン。」
「わ、わたし……。」
ただ、あの時は、彼のことが知りたくて。必死だっただけで。
「しかし、もう二度と、あんな、危険な真似はやめてくれワン。」
「あの時、緑谷が行かなかったらお前は死んでいただろ。もっと自分を大切にしろ!」
「は、はい。」
自分を大切に。あまり考えたことなかったことで、ハッとされられた。お爺さんも、凄いひとなんだ。名前知らないけど。
「ありがとうございました……わん。」
そして、面構さんとお爺さんは去っていった。
あの人たちが、かっこいい大人。その日私は、社会を動かす上での大切な決まりを、しっかりと教えて貰った。