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短編夢

第1章 ある夏の日【跡部甘夢】



腕を掴まれたまま傘も持たずに外に連れ出されたが、
目の前には黒塗りの車が待機されていた。


「景吾、どこ行くの?」
「いいから乗れ。」


運転手さん・・・田中さんだったかしら。
30代くらいの優しそうなお兄さん。
どうぞ、とドアを開けてくれていた。

小さく会釈をして、車へと乗り込む。
それに続いて景吾も私の隣へと乗り込んでくる。

「田中、あとは任せた。」
「かしこまりました。」

行き先はどうやら決まっているらしい。
そっと私の頭を撫でながら彼が私に話しかける。

「せっかくのデートが雨になっちまうとはな…。」
「でも行くところは決まってるんでしょ?私は景吾と一緒ならどこでも…。」
「いや、雨の場合も想定してプランは組んでるから別に慌てることではないんだが…。」

何故だろう、少し気分が落ちているように見えるけれど…。

「景吾、どうしたの?なんか落ち込んでる…?雨嫌い…?」
「ああ。今日に限って言えば雨なんか大嫌いだ。」

少しふてくされるように窓の外へと顔を向けた。
どうしよう、と運転席に目を向けると田中さんがにこやかに教えてくれた。

「景吾様は、本日海に行きたかったそうで。」
「た、田中!」
「芽衣様の水着姿を見たかったのではないかと推測いたします。」

どちらにしても水着の用意なんかしていないし、
頼まれた記憶もない。

「景吾、私その話聞いてないけど…。」
「俺様が選んだ水着を着せたかっただけだ。」

田中さんに余計なことを言われて余計にツンツンした景吾さんはぷいっと窓の外に視線を戻してしまった。

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