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【YOI男主】大切な人【男主&勇利】

第2章 言葉よりも、雄弁に


3日後。

ヴィクトルに演技の構成を書いたメモを渡した純は、白いTシャツと黒のスリムボトムの上に、黒のパシュミナのストールを羽織った姿でリンクに足を踏み入れた。
「ふーん、ジャンプが3A又は2Aとステップからの3S、後は3Lzからのコンビネーション…か。何つけるの?」
「そこは、膝の具合と相談。いくら難易度落としてええ言うても、勇利の『エロス』滑るのにあんましょっぱい真似は出来ひんからな。…しかし、何で練習時間終わっとるのにこんなにギャラリーおるん?」
リンクの周囲を見渡しながら、純はゲッソリとした顔で呟く。
こちらを遠巻きに伺っている選手達に加えて、客席の最前列にはユーリやミラ、ギオルギーが陣取っており、更にその後方には何の気紛れなのかヤコフとリリアもいたのだ。
「皆、お前の滑りが見たいからに決まってるじゃないか。ここ数日、言葉だけでなく勇利に実演で解説してるお前に、興味が湧いたみたいだよ」
「うーん、有難いようなそうでないような…」
「僕はちょっと不満だけどね。何でもっと早くそうやって教えてくれなかったのって。そうすれば、あんな喧嘩しなくても済んだのに」
やや不満顔の勇利に言われた純は、「ゴメン」と首を竦める。
「いや、俺は今後の勇利とついでにこいつの為にも、あの喧嘩は必要だったと思うよ」
「『ついで』て、何やねん」
「そうした俺に対する軽口、勇利にもすればいいじゃない。変な遠慮なんかしてないでさ」
ヴィクトルに指摘されて、純と勇利は互いの顔を見合わせた。
「純は、まだ僕に遠慮してるの?」
「遠慮ていうか、僕の嫌な所をあんまり勇利には見せたなかった方が正解かな。君の前ではインテリで平静な上林純でいたかった、みたいな…」
ボソボソと弁解する純を見て、勇利は面白そうに笑った。
「純が、本当はちょっとワガママでヴィクトルみたいに口が悪くて甘えん坊なの、僕もう知ってるのに?」
「うわ、ひどっ!」
「『俺みたい』って、どういう事?」
ヴィクトルに詰め寄られて狼狽える勇利を見て、純は小さく吹き出した。
そのお蔭で少し緊張が解れたようで、先程よりもリラックスした表情で、所定の位置につく。
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