第3章 最初で最後の恋
「…なぁ、もうひとつ。約束、させてくれねぇか…?」
「…?」
はらはらと頬をすべる雫をそっと指でぬぐってやりながら、涙で揺れる瞳をしっかりと見つめて。
「…来世で、俺と一緒になって欲しい。
次の世でも、必ず俺は…ゆきを、見つけるから」
たとえ姿形が変わろうとも、俺の魂は、君を求めてやまないから。
必ずお前を、見つけだす。
「今世の俺には、お前との恋情がひとつありゃいい。後は全部、武士になるために身も心も使う。…だから来世では…何があろうと、ゆきと一緒に生きたい…」
遠く遠く、当てもない先の話。
約束と呼べるかどうかもわからない、この想い。
けれど、言わずにはいられなかった。
何よりゆきを、愛しているから…。
俺の話を聞いたゆきは、何度か目を瞬かせてから、ふにゃりと笑んだ。
俺の大好きな、春のひだまりのような笑顔で。
「…うん。約束だよ、歳さん。来世でも、私を見つけてね。そうしたら絶対、私はまた…
― 貴方に、恋をするから…」
「…あぁ、約束だ…」
自然と掠めるように触れた唇は、ひどく甘くて。
たった一度の口付けが、
これが最初で最後の恋なのだと、教えてくれた…。
…桜花恋語 三話完。