第3章 最初で最後の恋
「…ずるいって、わかってる…歳さん気にするの、分かってて、私は…」
「…っ、馬鹿野郎…!」
震える声音にたまらず、細い体を抱きしめた。
「…だって、好きなの…愛してるの。だから、嫌…私は、足かせになんかなりたくない。いつだって、貴方の背を押せる存在でありたい…!」
俺の背に縋るようにして、泣きながら紡がれる言葉は、
あまりにも、切なくて。
どうしようもなく…甘く、響く。
「…お願いだから、背負おうなんて思わないで。私は、幸せになるの。誰よりも、幸せに…なるから、だから…迷わないで…」
あなたの進もうとする道を、どうか迷わないで。
あなたの叶えたい夢を、どうか迷わないで。
そしてどうか、私にも。
あなたと同じ、夢を見させて…。
「…あぁ、わかった…約束する。何があっても、俺は武士になる。決して、諦めたりしねぇ」
ぎゅう、ときつく抱きしめれば、更に縋るように背を掴む腕に、胸を締め付けられて。
この約束を、決して違えたりしないと、己に誓う。