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# 3104【気象系】

第4章 # 4n5


「そんなとこ突っ立って何やってんだ? ホラ、お客さんが智の色、イイって!」


腕をグッと掴まれて
何も知らない慎吾に引き摺られるようにして
躓きそうになりながら、トンと背中を押されてその人の目の前に立たされた



「この色とデザイン、コイツのなんですよ!
イイでしょ? ね、お客さん! …って、」



僕達の異様な空気に気付いたのか
慎吾が押し黙って







「……兄さん、」


「えっ……?」






桜のボードの所に居たはずの達也さん達までやって来て






「………久しぶり、…カズ。」






カラカラに乾いた喉からやっとの思いで絞り出した声は
情けない程に小さく、掠れていて



「カズくん? どうした?」



背の高い男の人が肩に手を添えながら
俯いたカズの顔を心配そうに覗き込んだ




「兄さんっ…!」




その手を振り切るようにして
ドン、と勢い良くぶつかった身体は小さくて
なんだ、あんま身長伸びてないんだななんて




「……よか、っ…!」


「…ごめんな、カズ」


「……良かった、生きてて…くれてっ……
夢じゃ、ないよね………?」




今まで何やってたんだ、とか
なんでこんな所に、とかよりも先に
『生きててくれて良かった』と
カズがそう言ってくれた

僕がした裏切りは決して許されるものじゃないと分かっていたけど

それでも

もしかしたら見えない兄弟の絆ってやつが、東京から遠く離れたこの地にカズを引き寄せたんじゃないか、なんて柄にもなく思ったりして


「…夢なんかじゃないよ」


泣きそうになるのを堪えてそう伝えるので精一杯だった
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