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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第8章 在邇求遠



手の中に吐き出してしまった熱‥

心に残った罪悪感‥

おれはなんてことを‥


襲いかかる虚脱感に押し潰されて、ずるずると身体が崩れていく。

頭の中が真っ白になっていて、何も考えられないまま冷たい壁に凭れいた。


気がつけば壁の向こう側から聞こえていた声は消えていて、部屋の中はしんと冷たい静寂に包まれていた。


智‥

君の言っていたことは‥そういうことだったんだね‥


兄さんを愛さなければならない、自分で望んだことなんだと‥その言葉の意味がようやく理解できた。

「君は‥兄さんに抱かれる為に‥鎖で繋がれていたんだ‥‥。」

折檻なんて生易しいものじゃなくて、もっと‥辛い行為を強いられてた。

なのにおれは‥‥

手の中から流れ落ちていく冷たくなった罪悪の証に、心までもが押し潰されそうになった。


柔らかな頬を伝った涙を思い出す。

胸の中で泣き噦っていた姿を思い出す。

必ず会いに行くからと言ったおれに向けた嬉しそうな微笑みを思い出す。


「‥智‥‥、おれ、君のこと‥」

『翔君‥』

耳を擽ぐるような声が聞こえた気がして‥目の奥を熱くしていたものが頬を伝った。


おれ‥君のこと、好きだ‥

ただ会いたいだけじゃない‥

君に触れたい‥抱きしめたい‥

おれだけのものに‥したい‥。


こんな形で自分の気持ちに気がつくなんて‥

「智‥、おれのこと軽蔑しないで‥。おれは兄さんとは違う‥。」


君のことを純粋に助けてあげたいと思った。

君の楽しげに笑う顔が見たいと思った。

その気持ちに偽りは無い‥ただ快楽に濡れた君の声を聞いて、その身体を欲しいって思ってしまったんだ。


兄さんの情慾を受け止めた智は、きっともう眠りに就いているだろう。

夢も見ないほど深い眠りの底にいる‥兄さんの腕の中で。


この壁の向こう側にいきたい。

智に会いたい。

会って、好きなんだって‥おれと一緒に逃げようって言わなくちゃ‥。

このまま智が兄さんに抱かれ続けるのなんて、耐えられないよ。


「必ず‥そこから出してあげる。」


そうしたら君は笑ってくれる‥?


こんなことをしてしまったおれのこと‥

好きになってくれる?



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