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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第8章 在邇求遠





「さっきのでは足りなかったと‥?そんなに男に抱かれたいのか」

違う‥
僕が求めているの快楽なんかじゃない‥

ただ温もりが欲しかった。

一人冷えた布団で眠りたくなくて‥

それだけなのに‥

「いえ‥僕が抱かれたいのは潤様だけ。潤様だけを‥愛して‥‥っんんっ」

偽りの愛を囁こうとする唇が塞がれ、同時に僕が逃れられないようにするためか、身体を抑え込まれる。


こんなことしなくたって、僕は逃げやしないのに‥

だって僕にはまだ成し遂げなければならないことがあるのだから。

今はまだ潤が僕を囲うために造った籠から逃げ出すわけにはいかないんだ。


潤に咥内を蹂躙されながら、僕は潤の腰紐を解いた。

すると潤もそれに呼応するかのように僕の襦袢の襟に手をかけ、一気に肌を外気に晒した。

僕は一瞬身体を震わせ、熱と欲を含ませた視線を潤に送りながら、開いた寝間着の間に手を滑り込ませた。

「僕を‥温めて‥」

肩口に埋めた潤の耳元に囁きながら‥




突然感じなくなった温もりに、僕は枕に顔を伏せたまま瞼を開いた。

僕が目を覚ましていることに気付いていないのか、潤は僕を暫く見下ろしてから、脱ぎ散らした寝巻を羽織り、気怠そうに長椅子にその長身を横たえると、時折溜息を漏らすように小さく息を吐き出した。

僕はその様子を息を潜めたまま伺っていた。

すると部屋の扉が数回叩かれる音がして、

「入れ‥」

潤が声をかけてから、ゆっくりと扉が開き、小さな足音が聞こえた。

「坊ちゃま‥今日は遠出されると聞いておりますが、御夕食はいかがされ‥ひいっ‥」

聞き覚えのあるその声は、悲鳴のような引き攣った声を上げた。

僕はその声に身体がびくりと跳ねそうになるのを堪えるように、枕の端を強く握った。

「ぼ、坊ちゃま‥あの子は‥‥」


澤が驚くのも無理もないか‥

鎖で繋がれている筈の僕が、潤の部屋で、しかも寝台で情事の痕を残した肌を晒して眠っているなんて、想像もしていなかっただろうから‥

「ああ‥あれか。鎖を解いただけだ」

顔を見なくても分かる程動揺している澤に向かって、潤は平然とした口調でいってのけた。



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