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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第8章 在邇求遠


智side


褒美だと言って渡された鍵を使って、足首に絡み付く鎖の錠を外した。

長いこと拘束されていたせいか、僕の足首には痣のような物が色濃く残っていた。

「僕を自由にしたことを後悔するがいい‥」

僕は少し軽くなった足で木戸に歩み寄ると、そこに耳を宛て、外の気配を伺った。

流石に深夜ということもあってか、物音はしない。

取っ手を握った手が、どういう訳だか震えたが、僕は一つ深く息を吸い込んでから、そっと木戸を開いた。

月明かりすら差し込まない闇の中を、壁を頼りに階段を降りて行き、再び突き当たった木戸を押し開いた。

一面の硝子窓から僅かに差し込む月明かりが、まるで玉座のように鎮座する寝台を照らし出した。

僕は足音を立てないよう、寝台に歩み寄ると、そこに横たわる潤の顔を見下ろした。

僕がいることに気付いていないのか、潤は穏やかな寝息を立てている。


今しかない‥

今ならこの男を‥
僕をこの上なく辱めたこの男を殺せる‥

でもどうしたら‥?

いっその事このまま縊り殺してやろうか‥

そうすれば僕は、冷たくて薄暗い屋根裏部屋で、膝を抱えて眠らなくても済むんだ。
自由になれるんだ。

でも‥自由になってどうする‥


僕は震える両手を、潤の首筋に向かって伸ばした。

そして指の先が目的の場所に触れようとした、その時‥

それまで眠っているとばかり思っていた潤の瞼が開き、

「何をしに来た‥こんな夜更けに」

感情を押し殺した僕の視線と絡み合った。

「潤様の傍にいては‥いけませんか‥?」

咄嗟に口を吐いて出た言葉に、自分自身に呆れる。


つい先刻まで殺意すら抱いていた男に、こうも簡単に愛を囁くことが出来るなんて‥

僕は一体何処まで堕ちて行くのか‥


「‥好きにしろ」

思いがけず返ってきた一言に、僕は襦袢の上から掛けた羽織を肩から落とすと、潤が横たわる布団に身体を滑り込ませた。

冷えた身体に温もりを求めるように、潤の身体に自分の身体を密着させると、そこから伝わって来る潤の体温に、僕の心に巣食っていた殺意が溶けていくような気がした。

「温かい‥」

更なる温もりが欲しくて、僕は布団の中で潤の手を探った。

そして触れた手をそっと撫でると、肌蹴た胸元へと導いた。

「もっと‥温めて下さいませんか‥」

濡れた言葉に艶の色を塗り重ねながら‥


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