愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第7章 掌中之珠
「可愛らしい声ではないか。そうだな‥一つ目の罰として、その手をここに‥」
私はその手を取ると、自分の首に掛けさせる。
「雅紀‥さん、俺、変な声がでたら‥」
「私は構わないが‥寧ろ、聞かせて欲しいと思っているくらいなのだよ。」
何もかもが初めてな君は、どんな声で啼き、どんな姿を見せてくれるのだろうか。
私の胸を高鳴らせた君のことを知りたいと思っているのだよ。
なのに和也は尚も不安そうに瞳を揺らし
「笑わないで‥くれますか‥?」
と声を少し震わせながら、愚問だろうということを私に問いかけた。
「ふふ、和也はこんな時にまで心配性なのかい?寝間で無言を貫かれると、私が困り果ててしまうよ。」
「‥そ、そう、なんですね‥」
あまりにも幼い問いに思わず本音が洩れてしまう。
不思議な子だ‥
こんなにも私の心を解きほぐしてしまうとは。
「君は素直な子だ。私には何も隠す必要など無いのだよ。私がそれを望んでいるのだから。」
私も君に隠すものなど、何も持ち合わせてはいない。
愛する者を失い涙を流すなどという情け無い姿を、散々晒してきたのだから。
内心の苦笑いが洩れてしまうのを隠すように、柔らかな髪を梳いてやる。
まるで幼子を眠りに誘うようなそれに、和也の不安げな表情も次第に薄れていき‥小さく頷いたのを見た私は、僅かに開いた唇に自分のを重ねながら、辛うじて浴衣の合わせを保っている腰紐をゆっくりと解いた。
するりと解けたのは腰紐だけでは無く、どうやら彼の心も同じように解けてしまったらしく、口づけた唇の隙間からは少しずつ吐息が洩れてはじめてくる。
ぎこちない舌を絡めては離していると、おずおずとそれを追って、私の咥内へと差し込まれてきて、湿った水音を奏でた。
夢中で私の舌を追う和也は、自分の浴衣が肌蹴けはじめていることにも気がついている様子など微塵もない。
私はゆるりと肌の上を覆っているだけの布の上から脇腹をひと撫ですると、開きかけている胸元から滑らかな磁器のような肌に指先を這わせた。
「んっ‥っ‥ん‥」
漸く私の片手の存在に気がついた彼は、肌に触れられた感触にくぐもった声を洩らした。