愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第7章 掌中之珠
雅紀side
不安げな唇を解し、舌先に触れた和也の小さなそれを、怖がらせないようにとゆっくり絡めとっていく。
それでも驚かせてしまったのか、ぴくりと指先に力が込められて‥その初々しさに愛おしさが溢れてしまい、戸惑っている小さな舌を強く吸ったかと思えば、自分のそれで咥内を味わうように舐めて‥
気持ちばかりが先に走っていた私は、和也が息を忘れていたことにも気がついていなかった。
大人げない自分の振る舞いに少し戸惑いながらも、その心地よさに頬が緩む。
唇を離してやれば、頬を紅潮させた彼は足りなかった空気を吸おうと息を早めている。
可愛いらしいものだ‥
口づけることにさえ不慣れな仕草には、妖艶さなど微塵も感じられないというのに、それが私の心を捉えて離さない。
目が離せない‥
微笑ましいとさえ思えてしまう。
なのにそんな彼がころりと表情を変えて可笑しそうに小さく笑うと、不意に私の唇を奪った。
まさか和也からそんなことをしてくるなんて思いもよらなかった私は、本当に軽く触れただけの口づけだったというのに、不覚にも驚きを隠せなくて。
「君は私が思っているよりも、ずっと悪戯が好きなようだ。」
その滑らかな肌に触れたなら、今度はどんな表情(かお)を見せてくれるのだろうと、紅潮した頬をするりと撫でる。
「雅紀‥さん‥?」
頬を撫でられただけで、戸惑いの色を含ませた声で私の名を呼ぶ愛らしい者を、甘く誘うように
「君のような子には罰を与えねば‥ね?」
と頬を撫でたその手を、寸法が合わず肌蹴かけている浴衣の襟から忍ばせる。
「えっ‥‥?」
小さく驚きの声を上げた彼は、自分の肌に触れた私の手に慌てたように袖を引く。
「君が私に悪戯ができないようにするのだよ?さあ‥見せてご覧。」
私がきゅっと握られた袖の重みに気がつかないふりをして、月明かりに透けるような薄茶色の瞳に、甘い罰を与えようと湯上りの肌を手のひらで撫でれば‥
「あっ‥っ、」
ちりんと高い鈴の音のような声を洩らし、それに驚いたかのように片方の手でそれを塞ぐ。
何と可愛らしい声なのだろう。
「恥ずかしいのかい‥?」
私を見上げる戸惑いの瞳にそう尋ねると、和也は丸みを帯びた手をそのままにこくりと頷く。