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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第7章 掌中之珠


「何も心配しなくていい」


俺の不安を感じ取ったのか、雅紀さんが濡れた髪を指の先で梳く。


「旦那様はお優しい方だから‥」


何も心配することはない‥

この人なら‥
この心優しい人ならきっと‥‥


上掛けを捲り、俺の隣に身を横たえ、俺の手に絡んだ雅紀さんの手から伝わる温もりに、心からの安堵を感じる。


「和也‥慣れないだろうが、先程呼んでくれた名で呼んでくれないだろうか‥」

「‥雅紀、さん‥」


月明かりの下で、俺を見下ろす熱い視線に応えるように、俺は掠れた声で愛しい人の名を呼んだ。

思いを伝えるように‥


そうすると、俺の思いを受け止めるかのように雅紀さんの唇が俺の唇に重なり、啄むような口付けを繰り返しながら、まるで門を押し開くように、俺の唇を押し開いた。


不意に俺の舌先が雅紀さんの舌先に触れた。

それをきっかけに、雅紀さんの舌先が俺の舌先を絡め取り、ぴちゃりと小さな水音を響かせた。


強く吸われ、咥内を舐め回されると、それだけで頭が惚けたように虚ろになって、身体が粟立つ。


こんな感覚‥初めてだ‥‥


呼吸をすることすら忘れ、息苦しさに耐えきれず、雅紀さんの指に絡めた指に力が入る。

それに気付いたのか、雅紀さんが慌てて唇を離す。


「済まなかったね、君があまりにも可愛くてつい夢中になってしまったようだ」


俺よりもうんと大人なのに、はにかむように笑う雅紀さんがおかしくて‥

俺はぷっと噴き出す様に笑うと、首を少しだけ持ち上げて、今度は俺の方から雅紀さんの唇に自分のそれを重ねた。

軽く触れただけの、とても幼い口付け‥


雅紀さんは一瞬驚いたように目を見開いたけど、すぐにその目を細めて俺を見下ろすと、


「これは参ったな、私としたことがまさか君に唇を奪われるとは‥。一本取られたようだ」


絡んだ指を解いて、俺の頬をするりと撫でた。


「君は私が思っているよりも、ずっと悪戯が好きなようだ」

「雅紀‥さん‥?」

「さあ、どうしてくれようか‥。君のような子には罰を与えなければね?」

「えっ‥‥?」


くすりと笑って、雅紀さんが俺の浴衣の襟に手をかけた。
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