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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第7章 掌中之珠


和也side


こんな時に‥

仕方のないこととは言え、恥ずかしくて堪らない。

それに何より、雅紀さんの気を削いでしまったんではないかと思うと、申し訳なくて‥

俺は熱くなった顔を隠す様に俯いた。


でも雅紀さんは俺を咎めることなく、くすりと笑うと、


「すまなかったね‥もうそんな時間になっていたのだな。和也のお腹の虫は夕食を一緒に食べないかと誘ったのを聞いていたから、待ち遠しいと鳴いたのかもしれないね」


と、背中を一撫でしてから、俺を寝台から立たせた。


「ごめん、なさい‥」

こんなことなら昼飯をもっとしっかり食って来れば良かった。


「気にすることはない。では、もう一度鳴かれる前に出掛けようか」


申し訳なさと、どうしようもない恥ずかしさとで、後悔ばかりの俺の目の前に、雅紀さんの手が伸びる。


俺はその手を暫くの間見つめると、意を決してその手を握った。


俺だけに向けられる優しさを逃がしたくなくて‥‥



慣れない西洋料理の店で腹を満たし屋敷に戻ると、雅紀さんが風呂へと入った。


一人部屋に残された俺は、どうにも落ち着かなくて‥


机の椅子に腰をかけると、いつだったか雅紀さんが見せてくれた地球儀をくるくると指で回した。


つい勢いで泊めてくれと言ってしまったけど、まさか床を共にすることになるなんて‥


「はぁ‥‥」

窓から見える月を見上げ、溜息を一つついたその時だった。


部屋の扉が開き、湯上りで頬を紅潮させた浴衣姿の雅紀さんが、こちらに向かって歩いて来るのが、硝子窓に映って見えた。


「いいお湯だったよ。和也も入ってくるといい」

「で、でも、食事までご馳走になって、その上湯まで‥」

「いいから入っておいで?身体が温まるから」


そう言って雅紀さんは箪笥の引き出しを開けると、そこから浴衣を一枚取り出し、


「私の物だから、君には少々大きいかもしれないが、堪えておくれ」


俺の髪を撫でながら、俺の腕に梔子色の浴衣を抱かせた。
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