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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第7章 掌中之珠


雅紀side


涙に濡れた頬を拭ってあげていると、愛い(うい)目元をほんのりと赤く染めた彼から、暇を貰ったはいいが今宵の宿が無いと告げられて‥。

二宮君のことを知りたい‥このまま彼を帰したくないという思いが、一気に膨れ上がる。

けれども私はこんな初々しい青年に、邪まな想いを抱いてしまったことが恥ずかしく思えて、純真な瞳から思わず目を逸らしてしまった。


どうしたというのだ‥‥

穢れを知らない‥無垢な心を抱きしめて眠りたいと思っていただけの筈なのに。

ずっと以前に温もりを抱きしめて眠りに就いた夜の時とは明らかに変わってしまった想い。


‥智を抱いていた時とは違った想い。


躊躇いも無くその者を抱いていた筈なのに、二宮君に夜を共に過ごそうと口にしただけで、どうにも恥ずかしさが先に立ってしまい、抱きしめることで誤魔化してしまった。


大人の男としての振る舞いもできない私を、彼はどう思っただろうか‥

腕の中で体を強張らせてしまった小さな存在を、怖がらせてしまったかもしれないと思うと、後悔の念に囚われそうになる。


「もし君が嫌だと言うのなら、別の部屋に床を用意させるが‥」

いつまで経っても返事をくれない彼の瞳を見つめてそう付け足すと、泣き出しそうな色を濃くしてしまった。


ああ‥何で私は愛おしいと思う君にそんな顔をさせてしまうんだろう。


いつもと雰囲気を変えた二宮君が、自分の中の感情を止まることの無い振り子のように大きく揺らす。

ところがそれは思いもかけない彼のひと言で、その動きをぴたりと止めた。

「お慕いしておりました‥。ずっと前から‥旦那様のことを、ずっと‥」

柔らかな手で私の服を手繰り寄せ吹き込まれた言葉に、また胸が高鳴る。


本当なんだろうか‥


「顔を‥見せてくれないかい?」

頼みに応じてくれた彼は、まるで林檎のように色づいた頬で、躊躇うように私を見上げた。


そして彼の心を解きほぐすように髪を撫でてあげると、

「雅紀さん‥私‥いや、俺をあなたのお傍に‥‥」

薄茶の瞳を潤ませながら、懸命に言葉を紡ぐ。


私は支えてあげなければ崩れてしまいそうなほど震えている彼を寝台の端に座らせると、小さな唇にそっと自分のを重ねた。



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