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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第7章 掌中之珠


雅紀さんの屋敷が近くなるにつれ、期待と緊張に心臓が高鳴り出す。


本をお借りするだけ‥
坊ちゃんからの手紙を届けるだけ‥


何度自分に言い聞かせても、一度鳴り始めた胸の高鳴りはどうしても治まらず‥


雅紀さんの屋敷の門を前に、俺の足は竦んでしまった。


こんな慣れない服を着て、雅紀さんは変に思わないだろうか‥

こんな服、使用人の俺には不釣り合いだとは思わないだろうか‥


不安ばかりが脳裏を過ぎる。

あんなに会いたくて会いたくて堪らなかったのに‥


「おや?お前さんは‥確か何時ぞやの?」


突然声をかけられ、俺は咄嗟に顔を上げた。

そこには、以前尋ねた時に庭の掃除をしていた年配の男性が立っていて‥

俺を頭の先から爪先まで舐めるように見ると、顔を綻ばせた。


「こりゃ随分と見違えたもんだ。で、今日はどういった用向きで?」

「あ、あの‥、翔坊ちゃんから相葉様にお手紙を言付かってきまして‥。あの、雅紀様は‥」

「ああ、坊ちゃんならお部屋においでだよ」

「お邪魔しても‥?」


使用人の男性は俺の背中を軽く押すと、門の向こう側へと押しやった。


「ああ、お前さんなら遠慮はいらんさ」

「ありがとうございます」


俺は小さく頭を下げると、敷石が続く先に見える建物に向かって足を進めた。

さっきまでの、足の重さが噓のように軽い。


俺は玄関の扉の前に立つと、一つ大きく息を吸ってから、扉の取っ手に手をかけた。

すると、俺が取っ手を捻る前に扉が開いて、俺は開いた扉に引かれるように前のめりに倒れそうになった。


その時、

「危ない!」


聞き覚えのある声と、逞しい腕が俺の倒れそうになる身体を支えた。


「君は‥和也君‥‥?」


顔を上げると、そこに驚いたように目を見開く雅紀さんの顔があった。


会いたくて会いたくて、胸を焦がした人が、



すぐそばに‥‥
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