第14章 シュヴァリエ
「いやよ。…私はレイムを実験台にしたくない。実験なら私1人で十分でしょ?」
レイは私を守ろうとしていた。
今、私がジョエルの言葉に従ってしまったら、彼の行為を無駄にしてしまう。
私は初めてジョエルに抵抗の意思を示した。
「嫌か…。だが、この実験には相手がいる。そうだろ?お前1人でどうにかなるものではない」
ジョエルは醜悪に笑ってみせた。
その笑みを見たとき、ジョエルの企みが露わになった。
最初からそのつもりだったのだ。
レイを連れて帰ったあの日から、ジョエルという悪人はこの実験を見据えていた。
そのために、私とレイの仲を深めさせていたのだ。
「お前がレイムと交配しないと言うのなら、レイムの存在意義はない」
「それって…」
バンッ!!!
その音が鼓膜に響き、何が起きたのか頭が理解した時には、もうジョエルの指が拳銃の引き金を引き終わっていた。
耳を劈く音と硝煙の香り、銃口の靄。
少しずつ私の手から離れる熱。
全てがスローモーションに映った。
いつの間にか、隣にいたはずのレイは心臓辺りを撃ち抜かれ血の海を床に作り、倒れていた。
「レイ!」
私は実験台から飛び降りて、レイに駆け寄った。
「なんてことを…」
「レイムを助けたければ、お前の血をやるといい。並外れた治癒能力があるお前の血なら治せるかもしれんぞ?…まぁ、一度も成功したことはないがな。興味があったんだ。お前が望んで血を与えた場合、どうなるのか」
どっちにしろ、実験に使うのか…。
だったら、このままの方が…。
その方が幸せなのかもしれない。