• テキストサイズ

【BLOOD+】meaning of life

第12章 仕事


「どこに行くの?」

ジョエルに手を引かれ、初めて見る街の風景を目に映しながら私は問う。


「金を稼ぎに行くんだ」

ジョエルはそう言った。

ジョエルのほかにも数人、私と行動している。

私の監視役だろうか。

そんな事しなくても私は逃げない…いや、逃げられないと知っていながら、まだ私を縛っているということか。


屋敷を出て2時間ほどで大きな建物に到着した。

誰かの家らしいがジョエルは躊躇せず中に入り、階段を下りた。


地下には幾多もの椅子と部屋の三分の二を占めるステージがあった。

まるで…。

「ナリファイ行くぞ」

ジョエルは私の腕を掴み、ステージの裏に引っ張る。

しばらくすると、人の声が表から聞こえ出した。


それを見計らったかのように、ジョエルは私をステージに押した。

行け、とのメッセージだと分かった。


ステージに上がると席は満席であることに気づいた。


そして私は何人かで押さえつけられ、着ていた服を無理やり全て脱がされ、板に手足を貼り付けられた。


ああ…やっぱり見世物なんだ……。


ステージを見上げるあまたの視線が突き刺さる。


刃物を振り上げたジョエルが私の前に立ち、一気に私を切り開く。

「うわぁぁぁぁ!!」

毎日訪れるのに慣れないこの痛みが今日も私を襲う。

悲鳴に口角を上げる見物人。

みんな狂っている。


痛いはずなのに次々に傷が治って行く体。

狂っているのは私なのだろうか?


私の精神は少しずつ塵になっていった。


「本日はありがとうございました」

終了のアナウンスが響き、人々は帰って行く。


傷がない体から滴る血液。

朦朧とする意識の中、お金と引き換えに帰って行く人々の手に何かが渡されているのが見えた。

赤い液体。

毎日見るそれは、一目で血だと分かった。


「今日はよくやった。帰ろう」

笑顔で促すジョエルに私は従うしかない。


シワがついた服を拾い上げ、着るとすぐに先を歩いているジョエルを追った。
/ 56ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp