第11章 私
1836年。
「いやぁぁぁぁ!!」
痛みと恐怖で発せられる悲鳴が異質な部屋に反響した。
生を受けて三年。
これが私の覚えている記憶の先端。
麻酔もされずに体を切り裂かれる。
血はゴボゴボと音を立てて流れる。
逃げ出したいが手足は拘束され、動かせる状態ではない。
また、刃物が皮膚を切り裂き肉に到達する。
何度もこの部屋で動かなくなる動物を見た。
呼吸や脈が止まり、動かなくなることを死ぬと言うらしい。
自分はいつ死んでもおかしくはない。
しかし、死なない。
自分がなぜ死なないのか、ずっと不思議だった。
傷は端から塞がり、切られた痕すら残らない。
死なない体だった。
私の生きる価値はジョエルの玩具であること。
私には2人の妹がいるらしい。
私が玩具になっていれば、妹たちは実験台にしないとジョエルは言った。
私は特殊だから大丈夫。
妹たちは私が守る。
そもそも、私が玩具に選ばれたのには理由がある。
私たち三つ子が生まれてからすぐ、私たちの血を採取して実験をしたそうだ。
私以外の2人の血が接触すると凝固し鉱石のようになる。
しかし、それに私の血を入れると凝固は解消され、私の血となる。
その現象は凝結した状態からでないと起きることはない。
つまり、順番を違えると私の血は意味をなさないものとなる。
むしろ順番を違えた場合、私の血は毒のような存在となるという。
以上が実験の結果であった。
私の血だけが他の2人と異なる。
この結果にジョエルが興味を持った故に、私はこうして玩具となっている。
ちなみに私の名前が長女であるはずなのに母体につけられた名のサヤではなくナリファイであるということも、この結果に準じてつけられた。
ナリファイの意味は無効にするや価値をなくすなのである。