第2章 目覚め
「レイ、ありがとう」
記憶を思い出させてくれたこと、眠っている間ずっと側にいてくれたこと。
そして何より…あの感覚に襲われてた最中、ずっと手を握ってくれていたことに対してである。
この子はいつもそうだ。
目覚めの時は私が大丈夫と口にするまで手を離さない。
従順な犬のようである。
「もう、大丈夫よ」
「わかった」
頷きつつも眉をひそめて心配そうに顔を覗き込んでくる。
私がそれに微笑を浮かべると安心したらしく、彼も柔らかに笑い手を離した。
「おはよう。待たせてごめん」
そう言って私は眠りで固まった体を強引に起こした。
体を起こすと、そこは意外にもベッドの上だった。
辺りを見回すと、ほとんど原形はとどめていないが、どこかわかった。
「ここは動物園ね」
「ああ…。ナルが寝ている間に運んだ」
旅ばかりで一文無しの私達を休眠期の間ずっと泊める宿があるはずもない。
いつもなら洞窟や森で寝るが、今回の眠りは急であったため寝床を見つける暇すらなかった。
その所為もあり、レイはこの始まりの地のやたら上質なベッドを選んだのだろう。
「ねぇ…レイ。あの2人は?」
「まだ………。」
2人とは私の家族のこと。
互いに対立し、傷つけあっている。
レイが首を振ったということは、まだ続いているようだ。
私は小さく溜息をついて立ち上がる。
「行こうか」
レイは無言で頷いた。