第8章 血
「お迎えにあがりました」
重たい地下室の扉が鈍い音を立てる。
その音と共にソロモンの声も滑り込んできた。
「終わったのね」
「はい」
「じゃあ、ディーヴァのところへ行きましょう」
私たちはまた、ディーヴァのいる最上階へと足を進めた。
最上階の一室ではディーヴァが機嫌よく石畳に座り、脚をバタつかせていた。
先ほどの雰囲気とは全く違う。
「ナル姉様!」
こちらに気づいたディーヴァが笑顔で駆け寄ってくる。
私はその身体をしっかり抱きとめた。
「私、思い出したわ。全部!」
目覚めの血を受けたのだろう。
彼女の顔はとても晴れやかだった。
「ナル姉様はこれからサヤ姉様のところに行ってしまうの?」
私の顔色を伺うように聞いてきたディーヴァの顔は悲しみに満ちたものに変わっていた。
「……ええ」
「ナル姉様は私とサヤ姉様…どっちの味方?」
「どちらの味方でもないわ」
捨てられた子犬のように目を潤ませて訴えかけるディーヴァに私が選んだ言葉は残酷だった。