第5章 誘い
ベトナムに着くと、そこではちょっとしたニュースが報道されていた。
ベトナムのお嬢様学校であるリセ・ドゥ・サンクフレシュでファントムが再び現れたという事件だ。
ファントムは気に入った生徒に青い薔薇を送り、それを受け取った生徒は行方不明か死体になるとの噂である。
私自身ファントムには全くと言うほど興味はないが、青い薔薇には少々覚えがあった。
ファントムにはディーヴァが関わっているだろう。
そう感づき、リセ・ドゥ・サンクフレシュに歩みを進めた。
リセ・ドゥ・サンクフレシュにて、今日はダンスパーティーが開かれていた。
私はドレスではこの時代に合わないと思い、服装を変えた。
それがまさか裏目にでるとは思いもしなかった。
つくづく運が悪い。
このままの服装では場違いなのだが、見つけた有力な手がかりをみすみす逃したくはない。
そのため、はたまた手荒だが、日が沈んだ頃に忍び込むことにした。
夜になり、優雅な音楽が辺りを包み込む。
窓辺には室内の光が映し出す男女の影。
影からでも煌びやかな衣装を纏いしなやかにダンスを楽しむ姿が目に浮かぶ。
しかし、外では私とレイは共に地面を蹴り、学校の屋根に飛んでいた。
屋根からはバラ園が見えた。
そこの奥に見える円筒形の東屋に吸い込まれるように足が動いた。
東屋な錆びついた扉を開け、躊躇せずに入ると、通路が続いていた。
パンッ!!
突然、甲高い銃声がこだまする。
「ナルここだ」
レイが指差したのは地下に繋がる縦穴だった。
「行くしかないみたいね…」
平凡な学校であれば銃声なんて聞こえるはずがない。
何かがあるとその銃声が物語っていた。