第4章 君色(中編)~蒼世~
「それで?あんな人とは誰のことを言っている?」
『…今日はやけに食い下がってくるね。』
「隠すな。」
俺は全て知っている。二年前その男とお前の間に起ったことも。お前が俺にそれを知られたくないことも。
「…そいつを追っている。仕事だ」
いつになく真剣に答える蒼世に私は何も言えなくなった。今日の蒼世はどこかおかしい。いつも冷めた冷静な瞳がギラついている。
それ以上に蒼世が二年前のことを知っていたことに対して反応をとれないでいた。
ようやく声を出せたが、それは蒼世に届いたのかわからないほど小さい声だった。
『…つから…いつから知ってたの?』
「…つい最近だ。ある男のことを調べていたらお前のことが浮き彫りとなった。安心しろ。これはごく少数しか知らないことだ。」
誰に知られようが蒼世に知られてしまっては意味がない。一番隠し通したかった人なのに…。
『…なた…には…知られ…った。』
「なんだ?」
『あなただけには知られたくなかったっ!!』
私はその場から逃げた。