rain of teardrop【黒バス/ジャバ】
第35章 the price of choice
「…ッ……ハ…。サイコーだぜ……名無し――」
元々体積の多いそれが咥内でぱんぱんに膨らむのは分かりきっていたことだ。
太く強固なものになれば、しばらくの口淫ののち、また組み伏せられて好き放題に抱かれるだろう。
そのときに新しく動画を撮られようとも、名無しの心労は以前のものの比ではなかった。
あの辛い記憶を、もうシルバーも自分も目にすることはないのだから。
過去に囚われ憂い続ける必要がなくなった名無しにとっては、現在の行為は凄惨には到底値しなかった。
それに、どこかで階段を踏み外しているとはいえ、惚れているのはもう、どちらかの片方ではなかったから……。
「おまえが上手に咥えるからよ……ほーら」
「っ、ん……、……!!あ、ゆび……」
「力抜け……ゆっくりしてやるから」
「ッ……、ん…」
もう、ただの粗暴なセックスじゃなくなっている。
臀部に手を伸ばされて一瞬身体を強張らせた名無しは、遅れて起き上がったシルバーに耳元で囁かれ、その緊張が解けたことに高揚心を擽られた。
ちら、と横目に見つめるとすぐに視線は重なり、その後は唇を近付けられる。
名無しは拒む動作ひとつなくそれを受け入れ、静かにキスを交わした。
舌が絡み、夢見心地に脱力させられたときには、シルバーが再び携帯を手にしている姿が視界に入った。
名無しにはそれを拒否する権利はなかったけれど、同時に拒否をする理由も、今となってはなかった。
the price of choice
20200301UP.