• テキストサイズ

rain of teardrop【黒バス/ジャバ】

第36章 the beginning of hell



どの口が言ったものか……。
名無しが聞きたくなかったそれは、自分たちの本来の関係性だ。

元はもっと劣悪な関係だった。

身体だけのそれ、脅されていた過去……。
ただ、今はもう違うと言い貫くシルバーに、どうすればそれが真実だと追求することができただろう。

自信もどこから沸いて出るのか分からなかったけれど、それでもふと、そのときシルバーに手招きされたことを、名無しは決して不快に思っていなかった。


だから多分、それがこたえだとも思った。


「っ……」


彼がふいに口漏らした、自分が呼び出された本当の理由を話す、照れくさそうな表情に抱くのは淡い恋に似た気持ち。

名無しの肩の力がスッとなくなったのは、そんなささやかなシルバーの気遣いが知れたからだった。


試しに返答した内容で気分と顔色が豹変し、もしもその瞬間に押し倒されでもすれば、或いはまだ突き放せたかもしれないというのに……。


大きな手に同じ部位を乗せ、強引に引っ張られる。

たとえバランスを崩しても、やはり名無しには、それすら心地よかった。


「はは……ッ…。分かってるよ……ほら来い。名無し……」


「ッ……」


シルバーは名無しのホラー嫌いをちゃんと覚えていたし、彼女の零すジョークに便乗し、その場で歯を見せて笑いもした。


心の隙間にどんどん入られる。
彼のことで胸がいっぱいになる。

いつぞやとはまるで違う……。

ソファに座らされて肩を抱かれれば、願ってもみなかった今はさながら、何気ない男女の過ごす週末の風景そのものだった。

/ 428ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp