第13章 嵐の文化祭 その6
「・・・・・・」
「・・・・・・ヒカリ」
ヒカリの笑顔を見た途端、たまらなくなって、気付いたら俺はヒカリを自分の胸に抱き寄せていた。
「・・・っ・・・宗介さん・・・」
「・・・・・・好きだ・・・ヒカリ」
『一度しか言わない』なんて言ったくせに、知らず知らずのうちに気持ちが溢れていた。もう二度とこいつが俺に笑顔を見せてくれないんじゃないか、こんな風に二度とこいつを抱きしめられないんじゃないか・・・ずっと不安だった。
でも今、ヒカリは確かに俺の腕の中にいる。その小さな身体をさらに強く抱きしめた。
「っっ!・・・も、もう・・・っ・・・」
「・・・ああ」
「こ、こうして・・・宗介さんに・・・ぎゅってしてもらえないって、思ってた・・・っく・・・」
ヒカリも俺と同じ不安を抱いていた。そして、ヒカリの声が微かに震え始めた。
「ばか・・・そんなわけねえだろ」
「っ・・・っふ・・・ぅわあああん!!」
ヒカリは、ガキみたいに大きな声をあげて泣き始めた。そんなヒカリを俺はいつまでも抱きしめ続けた。
「・・・落ち着いたか?」
「ん・・・ごめんなさい・・・制服、私のせいで・・・」
「そんなの気にすんな」
しばらくの間、泣きじゃくってようやくヒカリは落ち着いてきた。俺の制服は、ヒカリの涙で濡れてしまっていた。だけど、元々サバゲーで濡らして汚してしまっていたし、ヒカリの涙なら構わなかった。
そのまましばらくの間、俺達は何も話さずにただ抱き合っていた。もう夜も遅くて肌寒かったけれど、俺に身体を預けてくれるヒカリの体温が心地よかった。
「・・・宗介さん」
「なんだ?」
少ししてヒカリが小さな声で俺の名前を呼んだ。俺はヒカリを抱きしめたまま、答える。
「あの・・・私ってやっぱり子供っぽい、でしょうか?その・・・宗介さんが、えっと・・・そういう気持ちにならないほどに・・・」
かなり言いづらそうな、恥ずかしそうな声でヒカリが俺に聞いてくる。何かと思ったが、ヒカリの勘違いに少し笑ってしまった。
まあでも無理はない。さっきこいつは、俺とのそういうことなんてまだ想像もできないと言っていた。