第8章 嵐の文化祭 その1
「う〜ん、どこで時間を潰そうかなあ・・・」
廊下を歩きながら考える。色々美味しそうな模擬店があったから、それを全制覇してもいいかもしれない。だけど、あんまり食べすぎるとさすがに宗介さんのオムライスが入らなくなってしまう。
「・・・ふふふ!」
後で食べられる宗介さんのオムライスと、宗介さんと一緒に過ごす時間を想像すると、自然と笑みがこぼれた。
浮かれた気持ちで廊下の曲がり角を曲がった瞬間だった。
「きゃ!」
「わぁっ!!」
向こう側から歩いてきた人に気付かずに、軽くぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい!あの、私がボーッとしてたせいで、本当にすいません!!」
慌てて頭を下げる。
・・・宗介さんとの最初の出会いも、私の不注意からぶつかってしまったわけだし、本当に私はもっと気を付けないといけない。
「大丈夫、気にしないで!私も不注意だったし」
「い、いえ!私が悪いんです。ホント、すいません」
頭を上げると、そこにはとても綺麗な女の人がいた。大学生ぐらいだろうか。背も高くてスタイルもいいし、まるでモデルのようだった。そして、とても気さくな雰囲気で、私を許してくれた。
「あはは、そんなに必死に謝らなくてもいいわよ。あなた、中学生?お兄ちゃんの文化祭に来たの?しっかりしてるわね」
もう慣れているけど、やっぱり少しショックを受ける。こんなに綺麗な人に言われたら、尚更。
「あ、い、いえ!私は高校生・・・」
「ねえ、水泳部の模擬店の場所ってこの近く?」
訂正しようとしたけれど、それよりも早くその人が質問してきた。
「あ、はい!それでしたらここの廊下をまっすぐです」
「そう、ありがとう。それじゃあね」
訂正できなかったのは残念だけど、これでぶつかってしまったお詫びが少しでもできたのなら嬉しい。その人は私に手を振ると、廊下の向こうへと歩いて行ってしまった。