第19章 悩める季節 その2
「そろそろかけてみるか・・・」
風呂から上がり、凛が愛達の部屋に行ったタイミングで、俺はヒカリに電話をかけることにした。
・・・まさかあいつ、いっぱいいっぱい過ぎて電話無視したりしねえよな、なんて思ったが、すぐにヒカリは電話に出た。
『は、はいっ!長島です!』
「・・・俺。今、平気か?」
『は、はいっ!』
・・・やっぱりおかしい。何が『長島です』だ。知ってるっつーの。声もなんか上擦ってるし。
「お前、今日コート忘れてったろ。江が明日学校で渡すって言ってたぞ」
『へ?・・・あ!!ど、どうりで。なんか帰り寒いなーって思ったんですよ、あはは・・・』
・・・『あはは』じゃねえよ。今気付いたのかよ。気付くの遅すぎだろ。
「・・・おい、風邪ひくなよ。期末前だろ」
『は、はい。そ、そうですよね・・・江先輩に明日謝らなきゃ・・・』
・・・さあ、とりあえずここからが本題だ。こいつがここまで様子がおかしい理由を何としてでも聞きださねえと。
「なあ、ヒカリ。お前、ホント今日おかしいぞ」
『へ?!』
「・・・何かあんなら言えよちゃんと」
『い、いいい、いえ別に何も・・・ない、です・・・』
・・・ホントこいつ隠し事するの下手だな。声だけで、何かがあるのがよくわかる。俺は大きく息を吐いてから続けた。
「はぁ・・・・・・言ったよな?俺。『言いたいことがあったらちゃんと言え』って」
それはまだつきあい始めて間もない頃に、俺がヒカリに対して言ったことだった。『何を言っても嫌いにならない』とまで言ってやったのに、一体いつまでこいつは変な遠慮をしてるんだ?と少し腹も立ってくる。
『・・・・・・あのっ!・・・・・・・・・』
「・・・おう」
電話の向こうでヒカリが何回も深呼吸をしているのがわかる。
・・・いや、一体何を言おうとしてるんだ、こいつは。とんでもないこと言い出すんじゃないだろうな、と少し身構えた時だった。
『く、クリスマスイヴの日、宗介さん、何か予定ありますか??!!!』
一瞬、耳がキーンとなるほどに、バカでかい声が電話から聞こえた。