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夢恋

第9章 意味



 
 夏休みも残り僅かになった頃、友人達の反応は様々である。

 ギリギリまで残していた夏休み帳や課題に悪戦苦闘している者や早々に終わらせていた勝ち組は残り少ない夏休みを堪能している。

 そんな中、自分と大野君はと言えば当然、後者である。
 夏休み帳はちょっとずつやって最初の頃に早々終わらせていた為、今はまったりとゲーム中だったりする。


 「長友が死んでた」
 「クスクス、みたいだね」
 「なに?連絡あったの?」
 「うん、今週頑張って無理そうだったら週末家に来るって」
 「ハァーアイツ本当駄目だな、結局優仁頼みかよ」
 「クスクス」


 こうしてまったりしてる時間が一番幸せだ。
 彼に彼女が出来ればこんな時間は無くなるだろう。
 だから、今を大切にしたい。


 「なぁ優仁」
 「なに?」
 「どっかチャリでさ遠出しない?」
 「え?今から?」
 「いや、色々用意とかあるし明日とか?」
 「僕はいいけど、皆平気かな?結構な量のページ残ってたみたいだけど」
 「違うくて」
 「え?」
 「二人で行こうって言ってんの」
 「!?」


 多くを望まないようにと思うのに、彼はその考えをアッサリと崩してくる。
 彼の言動にドキドキさせられっぱなしだ。


 「いいけど、何処に行くの?」
 「ほら、前にじーちゃんが綺麗な川の近くに別荘がどうとか言ってたじゃん?あそこにさ、竿持って釣りしにいかね?」
 「随分急だね」
 「なんかさ、夏休み結構いいろいろやってたから、中々行く時間なかったし」
 「確かに・・・うん、いいよ」
 「やった!!じーちゃんに話してくる!!」


 説明する為に近くなる距離、楽しそうに話す貴方の顔を見て泣きたくなる程感じる幸福感。
 彼から貰えるだけ貰おう。
 それが例え過分だとしても、拒否なんて絶対に出来ないのだから。
 
 バタバタと部屋から出て行った彼を見送りながらそう思った。

 神様、どうかもう少しだ。
 彼の傍にいさせてください。
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