第9章 意味
ヒロイン視点
きっと彼のあの行動に深い意味なんて存在しないのだと思う。
どんな事を考えてどうしてあんな行動に至ったのかは分からないけれど、きっと、あの場の勢いみたいなものだった気がする。
私自身、意味なんて求めていない。
だって、意味がないと分かっているのにそれを求めたとしてもあるのは何も無いと言う事実だけ。
それを知っていて確認する程私はマゾではない。
だけど、私はあの日のあの事を絶対に忘れない。
それまでモヤモヤしていたものが無くなった気がする。
女の子だった頃には絶対に望んでも100%不可能な夢、男の子になったら更に絶望的になる筈の夢が叶った。
大好きな人とキス出来る、そんな事が叶っただけでもういいと思った。
だから、何も聞かない。
知らなくて良い事。
今、傍にいられる事実だけでいい。
もう、それだけで十分だ。