第8章 First kiss
ヒロイン視点
「優仁!!!!」
「気持ち悪いんだよッ!!!」
聞こえてきた声に勇気付けられてカッと目を見開いて目の前の男の顔面に頭突きを入れ力が抜けた所で首元と腕を掴んで懐の中に入り思いっきり一本背負い。
昔取った杵柄とはよく言ったもので、男は綺麗に身体を浮かせて地面へと転がった。
大人しそうに見えていたのだろう、突然の私の行動に驚いたようにゲラゲラと下品に笑っていた男達がピタッと静かになる。
「お前等!!優仁に何してんだっ!!」
「ヤバッ!!行くぞッ!!」
バタバタと走り去っていく男達。
周囲から人がいなくなり静かになって漸くその場に座り込む。
今更手が震えだす。
「優仁!」
「やだッ!!触んないでッ!!」
「優仁!俺だ!!」
「!!」
グイッと両頬を手で掴まれて上を向かされる。
パニックで流れ出る涙。
ぼやける視界の中、見えたのは大好きな人の顔。
「さ・・さとし・」
「おうっ!」
「智君ッ!」
バッと思いっきり抱きつく。
座ったままで抱きついてくる私のせいで大野君もその場に座り込む。
気持ち悪かった。
嫌だった。
貴方以外の男は例えそれが許されない事だとしても嫌だった。
「無事で良かった、心臓潰れるかと思ったッ」
そう言うと大野君は私を強く抱きしめる。
怖い思いをさせてしまったのか彼の体はカタカタと震えていた。
何度も大丈夫だと言ってくれる言葉に私は気持ちを必死に落ち着かせる。
さっきの男と同じように抱きしめられているのに、嫌悪感は感じない。
もう何度彼はこうして私を安心させてくれただろうか。
彼の心臓の音が恐怖を消してくれるようだった。
「ゴメンッ・・・なんかパニックになって・・・」
「・・・・・」
「あの・・・智君?」
「優仁・・・アイツにされた?」
「え?」
「・・・・口」
「されてないッ!!されてないよッ!!」
誤解でもそう思われたくなかった。
誰に何を勘違いされても貴方にだけはされたくない。
そんな誤解だけはされたくなくて、必死に彼の腕を掴んでそう言う。