第6章 間章 その熱の意味
O視点
それは不思議な夢だった。
そこが何処かわからないけど、見たことのない場所で俺は一人で立っている。
たぶん公園、何でこんな場所にいるのかわからなくて周囲をキョロキョロしているとこちらにむかって走ってくる女の人が目に入る。
普通ならそこで興味なんてもたない所が、何故かその人から目が離せない。
その女の人は随分急いできたのか荒い呼吸を繰り返しながらこちらまで来ると俺の目の前で足を止めた。
「待たせてごめんなさい智君」
その瞬間、思い出したのはあの夜見た幻。
顔は優仁とはまったく違う普通の女の人。
なのに、俺はこの人が優仁だと不思議だけどそう思った。
「クスクス」
「?」
「あのね、智君のこと大好きだよ」
「!!」
そこでバッと飛び起きた。
何でか息が上がり思わずそこが何処なのかを確認してしまう。
見慣れた自室の様子に、心底ホッとした。
クーラーが切れて暑くなったせいなのか夢のせいなのかはわからないけど汗でビッショリだった。
思い出すのはあの夢。
その時、室内に響くドアをノックする音。
心臓がバクバク言う程驚いた。
「智!何時まで寝てんの!?入るわよ?・・・あら起きてたの?なに?あんたどうしたの?」
「へ?」
「真っ赤よ?熱でもあるの?」
そう言われて母親が額に触れてきた。
指摘された頬の熱、そのせいか余計に全身が熱くなる。
「ちょっと熱ありそうね、着替えてから横になってなさい。クーラーはちゃんと点けなさいよ?」
「う、うん」
そう言って母親が出て行った後、ベットに倒れこむ。
手で顔を覆いながら盛大に溜息をつく。
「何だよあの夢ッ・・・・気持ち悪りぃ」
自分の口にした名前に思わずそう言う。
夢の中の女の人を見て自分は優仁だと思った。
言われた言葉に本来なら嫌悪する筈なのに。
「喜ぶとか・・・・意味わかんねぇッ」
何となく優仁に謝罪の言葉を口にしながらクーラーのスイッチを入れてタオルケットを頭からかぶった。